NHK終戦記念番組を見て…極東国際軍事裁判パール判事と広田弘毅

終戦記念日ウィークということもあって、NHKでは先の大戦絡みの番組が目白押しです。

13日 NHKスペシャル 「A級戦犯は何を語ったのか〜東京裁判・尋問調書より〜」

14日 NHKスペシャル 「パール判事は何を問いかけたのか〜東京裁判 知られざる攻防〜」

15日 日本の、これから 「考えてみませんか?憲法9条


今、『日本の、これから 「考えてみませんか?憲法9条」』第1部を見終わったばかりですが、いずれの番組も公平・公正を装いながらも一つの方向に誘導しようという「NHKらしい」制作意図を感じるんですが…


今日は趣向を変えて番組を見た感想などについて書きたいと思います。




まず、最初にお断りしておくと13日の「A級戦犯は何を語ったのか〜東京裁判・尋問調書より〜」は所用のため中盤くらいからしか番組を見ていません。(翌14日の「パール判事は何を問いかけたのか〜東京裁判 知られざる攻防〜」は全編見ました)


この両日のテーマは極東国際軍事裁判東京裁判)です。

この裁判では、連合国(戦勝国)からの判事としては、アメリカ、英国、ソ連、フランス、オランダ、中華民国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インド、フィリピンの11ヶ国が参加し、日本を戦争に至らしめた指導者として25名の戦争犯罪人について審理を行い、結果全員有罪うち7名が絞首刑となりました。


番組でも触れられていましたが、この裁判自体が「戦勝国が敗戦国を裁く」という構図であり、そこにはどうしても報復的意図が働いたのではないかという疑念や、戦争当時の国際法にはなかった「平和に対する罪」「人道に対する罪」という概念を持ち出し戦犯を裁くという矛盾(法の不遡及原則に反する矛盾)を抱えています。


また、裁判の主催者であった連合国軍マッカーサー司令官自身がこの裁判の価値を否定していたとも言われる場面や、イギリスのパトリック判事への本国政府からのプレッシャーなど描かれているシーンを見れば、「多分に政治的な意図をもった裁判」であったことは明らかであり、公平なものとは言い難いと言って差し支えないものと思います。


ただ、この裁判の価値を見出すとすれば、・サンフランシスコ講和条約で主権を取り戻すための手続きの一つという側面と、・戦前・戦時中には国民に知らされていなかった「どういう過程で戦争に至ったか」「誰が主導したのか」などの情報が明らかになったことくらいなのではないでしょうか。




広田弘毅について】


この裁判で唯一絞首刑とされた文官・広田弘毅については13日の番組でも取り上げられていたようです。


広田弘毅の死刑判決については異議を唱える声が多く(判事11人の評決結果も6対5だったと思う)、オランダのレーリンク判事は「広田が戦争に反対したこと、そして彼が平和の維持とその後の平和の回復に最善を尽くしたということは、疑う余地が無い」と明確に無罪を主張しています。


広田の有罪理由は、外務大臣当時に発生した「南京事件」に際して、軍部に対して改善を申し入れていたものの閣議にかけずにこの事件を放置・黙認した。というものでした。しかし、当時の日本政界は「統帥権独立」を盾に陸軍が圧倒的な権力を握っており、広田はこういう時局にあっても文官として最大限に戦争回避に尽力していたのは事実であり、「荒くれ検事」として有名な首席検事のキーナンですら「なんという馬鹿げた判決か! どんなに重い刑罰を考えても終身刑までではないか!」と批判的なコメントを残しているくらいです。


では、なぜ広田が死刑に処せられたのでしょうか?


軍人以外の重罪に処する犯罪人が必要との認識のもとそのスケープゴートにさせられた、死刑を免れた大物戦犯(文官)の法廷工作の犠牲になったという説などがあるようですが、真相はよくわかりません。


ただ、広田自身が裁判においては何ら弁明することなく淡々とした姿勢に終始し死に臨んでおり、こうした「自ら計らわぬ(広田の口癖だったようです)」という人生観は城山三郎氏の小説「落日燃ゆ」などを通じて多くの人に感銘を与えました。(私も感銘を受けた一人ですが)

※余談ですが、民主党の前原前代表は尊敬する政治家として広田弘毅と答えています。


いずれにしても、広田死刑判決がこの裁判がいかにいい加減で怪しげなモノであったのかを端的にあらわしているような気がしてなりません。




【パール判事について】



14日の放送では、戦争当時の国際法にはなかった「平和に対する罪」「人道に対する罪」という概念を持ち出し戦犯を裁くという裁判そのものの矛盾を敢然と指摘し、被告全員の無罪判決を述べたインド人のパール判事についてその考えにある背景や彼の絶対的な平和思想について描いていました。


判事同士の主導権争いがあったことや多数派であったイギリスのパトリック判事などは本国政府の政治的干渉を受けていたことなどなかなか公正な内容だなぁと思って見ていましたが、終盤の次のナレーションが台無しにしましたよ…


「パール判事は平和主義者であり、裁判後も日本を何回か訪問し日本の平和憲法を高く評価していました」(録画していなかったのでうろ覚えです)



いったい、どういう意味があってこのナレーションは挿入されたんでしょうか?

番組の本題である東京裁判とは全然関係ない話ではないのでしょうかね?


こういう本筋と関係ない発言をあえて紹介するのならパール判事の東京裁判の影響は原子爆弾の被害よりも甚大だ』というその後の発言も紹介したらどうなんだ!



NHKの制作意図が垣間見えてゲンナリした瞬間でした…





おっとイカイカン、そうこうしているうちに電波番組『日本の、これから 「考えてみませんか?憲法9条」』の第2部が始まっている!




第1部を見ただけで「痛い出演者の電波放出」にグッタリしていますが、続きを見てきます。こちらの番組についてのエントリーはまたの機会に…




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